翁長雄志・沖縄県知事への手紙


『生き抜くための省察録』から

翁長雄志・沖縄県知事への手紙

  ——2015年1月半ばすぎに


夜の言葉〔第005葉〕


 
 
 先月・2015年1月中旬に入って間もなく、辺野古を中心とした状況に関し、翁長雄志・知事の対応に、微妙な停滞と、現地で抵抗している方がたをはじめとする人びととの齟齬を感じ、知事への「手紙」という形式で小文を綴った。
 これは当初、あるメディアへの1市民からの「投稿」という形での発表を企図したものだったが実現せず、その後、中心的な部分に関しては、ほぼ同内容を「抄録」として、10本に分割した「ツイート」を1月25日にツイッター上で発信している。
 すでにそのときと較べても、事態はますます緊迫しており、しかも知事側の対応には、依然として明確な姿勢が見られないように思われる。何より、事態への対応において決定的に重要な「速度」が欠けている。現実問題として「月2回」の第三者委員会では、忌憚(きたん)なく言うならあまりにも「アリバイ」的に過ぎ、一方的に進められている埋め立て・工事に対し、有効な手立てとなるとは思えないのだ。

 したがって、以下の「手紙」は、もはやその意味がなくなりつつあるのかもしれない。
 だが、とりあえず2015年1月半ばの時点での思考として、ツイッターの大海から掬い上げておきたく、以下、若干の形式を整えた上、再録する。


  ……………………………………………………


翁長雄志・沖縄県知事への手紙

         山  口    泉


沖縄県知事・翁長雄志様。
 申し上げるまでもなく、辺野古をはじめ状況はいよいよ緊迫の度を強めています。にもかかわらず、率直にお伝えしますと、ここにきてあなたが沖縄県知事としてその持てる権限を、必ずしも十分に活かしきっておられないのではないかとの懸念を、私は禁じ得ません。
 昨年11月の県知事選で、私はあなたを支持しました。それは何より他に現実的な選択肢がなかったからですが、同時に選挙期間から当選・就任へと至る過程でのあなたの発言に敬意を覚えたからでもあります。そして、いまも私はその評価を手放してはいません。
 しかしながら、最近の展開は、昨秋あなたが県知事選に立候補しようとされつつ、辺野古埋め立て阻止を必ずしも「明言」されていないと受け止められていた段階で、人びとのあいだにさまざまな憶測を喚んでいた時期以上に深刻なものとなっている印象を受けます。それはなぜなら、すでに国家による圧制の歯車が道理を蹂躙して現実に動き出してしまっているからです。
 あるいはあなたは、日本政府との対峙において、なんらかの〝深慮〟を用意され、それを慎重に進めようとしておられるのでしょうか。
 けれども、よしんばそうであるにせよ、今はあなた御自身がこれまでのいかなる期間よりも明確に、政府に対しても、沖縄県警に対しても、海上保安庁に対しても、内外メディアに対しても、あなたを支持してきた人びとと共にあろうとする姿勢を示されるべき段階だと思うのです。
 年が改まってから立ちこめ始めている空気の一部には、かつてない閉塞感が澱んだものがあるようにも危惧されてなりません。そしてその底で、現在この瞬間にもなお闘いつづけ、傷ついている方がたがいます。中長期的な展望のみならず、いま必要な対応があります。
 刻刻と悪化してゆく事態を少なくとも凍結させ、人びとを守るため直ちにできることが、県知事としてのあなたには、幾つもおありのはずです。あなたが問題の所在を徹底して明示されれば、それを糺すべき世論を形成する道が拓けます。私たちがさらにそれを拡げます。
 もとより、あなたが立ち向かわれねばならないものの強大さは、私とて承知しているつもりです。ヤマトンチュとして心苦しい限りですが、他の都道府県のいかなる知事に対するそれとも次元を異にした日本政府のあなたに対する対応は、そっくり日本国家が沖縄の地をどう見做しているかの現われにほかならないでしょう。
 それらすべての上で私は、あなたに一切を委ねて済ませてしまうのではなく、あくまであなたと協同しつづける道を歩むことを選ぼうと考えた者の1人として、その困難を、できるかぎり皆で分かち合いたいと考えています。
 そしてあなたには、県知事として、辺野古をはじめとする沖縄の困難に関し、可能なすべての回路を通じての明確な発言と迅速な行動とを示していただくよう、強く強く、要請申し上げるのです。何より、県知事選においてあなたを支持した者の責任において——。

      〔山口泉『翁長雄志・沖縄県知事への手紙』了〕






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by uzumi-chan | 2015-02-13 12:19 | 【C】夜の言葉

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