「節電の夏」に誑かされるな 東京電力・福島第1原発事故(第99信)


すでに「取り返しのつかぬ今」を
もはや「取り返しのつかぬまま」見据えながら、
それでもなお、あの愚者たちに殺されないために……


「節電の夏」に誑(たぶら)かされるな




 だが、それにしても……なんと索漠たる、空虚な夏なのか。
 
 「節電の夏」が始まった、と——相も変わらず批判精神皆無の愚劣なマス・メディアが囂(かまびす)しい。
 そして、本来なら、大気中・土壌中のみならず、ありとあらゆる飲食物における放射線値をこそ、まず何を措いても報ずるべきであるのに、それらいっさいを等閑に付して、「電力予報」などという、どうでも良いことをことごとしく論(あげつら)い、犯罪企業の株式会社東京電力に、またしても絶大な権力を委任しようとする。

 真夏の最大電力消費量? 
 節電警告? 
 くだらない。

 よりによって、ほかならぬ株式会社東京電力・福島第1原発事故が発するそれらを、そしてそれを垂れ流すマス・メディアの情報操作を、またしてもこの国の犯罪的なまでに無防備な——早い話が、単なる馬鹿としか言いようのない、一部ないしは少なからぬ大衆は、またしても易やすと信じ込みたくてしかたないのか? 

 もしも——もしも、それがほんとうに必要だというなら、電力が底を尽き、「節電」の必要が出てくるというのなら……そんな重要、大切なことを、相も変わらず1私企業の——それも日本の歴史上、古河鉱業も、チッソも、昭和電工も、森永乳業も、三井金属鉱業も、住友金属鉱山も、カネミ倉庫も……それらいずれの名だたる公害責任企業も、遠く及ばぬ、疑いなく1民間企業として犯し得る最大最悪の公害・暴力を「核」の猛威のもと、ほしいままにし、しかも現在にいたるまで自らの責任も事態の深刻さをも隠蔽している犯罪企業の株式会社・東京電力になど任せ、その言うがままに従うようなことをしている場合ではあるまい。

 そうではないのか? 
 違うのか? 

 あの3月11日午後からの決定的な数日間……本来なら、何を措(お)いても、次つぎと継起する炉心溶融をリアルタイムで報告し、福島県浜通りどころか、東北一円の、少なくとも十代半ば以下の人びとだけでも、北海道ないしは西日本、さらには琉球弧や近隣アジア圏に大集団疎開さすべきところを——テレビカメラにでも記者団にでもなく、壇上の「日の丸」に最敬礼して登壇し、得意げに質問相手の記者を指名する猪八戒官房長官・枝野幸男らをはじめとする政治家・官僚どもを動員しては、ぬけぬけと「安心」デマを流し続け、「ただちに健康には影響ない」プロパガンダを繰り拡げ、揚げ句の果て、自らが最有力会員社であるAC(旧「公共広告機構」)の愚民政策の極みともいうべき下卑た似而非(えせ)道徳訓コマーシャルの醜悪でテレビを埋め尽くし、原発爆発を「ああ、爆破弁を開いたんですねえ……」とうそぶく“学者もどき”(??)を糾合し、取り返しのつかぬ放射線を盛んに細胞分裂を続けるDNAに浴びせ続け——それでも飽き足らず、ついにはその運命の数日間、民心を福島第1原発事故の終末的惨状から逸らすため、なんの意味もない「計画停電」情報操作で一大社会混乱を招き、信号停止で交通事故死者まで発生させ(それもこれも、すべて菅直人・枝野幸男政権と結託し、フクシマから国民大衆の目を逸らさせるためだ)……そして結局、電力供給事情には何事もないまま、福島をはじめ東日本に生きざるを得ない人びとには、老若男女を問わず、しこたまセシウム137・セシウム134・ヨウ素131・ストロンチウム90・プルトニウム239……その他もろもろを浴びせ続けてきた、あの東京電力に、またしても自分たちの生殺与奪の権をなんの疑いもなく委ねようというのか? 

 あの、紛れもなく生死の分かれ目だった3月中旬前半——自らの責任を糊塗し、大衆の耳目を奪うためにのみ「計画停電」を騒ぎ立てた株式会社東京電力の発する今夏の「電力予報」や「計画停電」発表を、すでにたんまり放射線被曝させられつづけてきた大衆は、またしても疑うことなく信ずるのか? 

 むろん政府もマス・メディアも、またアカデミズムもその大半は共犯関係にあるのである以上は、本来、「電力事情」の実態に関しては、 然るべき「民間」の——つまりは、真に公正な市民による検証機関を設置し、その機関が立ち入り調査して、継時的な把握をする以外には、ない。
 にもかかわらず、またしてもそれを東京電力などという犯罪企業に委ね、その発表をそっくり鵜呑みにし、電力政策に関する全権を賦与しているとは……。

 よしんば、この夏の電力供給に「危機」が訪れるとしても、それは東京電力・福島第1原発事故に較べれば、取るに足らない危機でしかなく、真に電力が必要な施設は十分な自家発電機能を具えた上、他に供給する余力も持っていよう。

 さらにさらに百歩を譲って——それでもなお、電力事情になんらかの不都合が生じたとしたところで、この地上において、株式会社東京電力にだけは、それに関し、国民に向けて発表する正当性も、指示する資格も、命令する権限もない。

 少なくとも、東京電力にだけは——。

 現状のまま、事態が推移するとすれば、この夏のうちにまぎれもなく、停止中の原発の再稼働が必要だとの恫喝を、この企業が——ないしは、それと結託した電力他社が行なってくることは火を見るよりも明らかであろう。

 人びとは、いくたび欺かれれば気が済むのか? 
 自らの命を的として——。
 






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by uzumi-chan | 2011-07-06 02:34 | 東京電力・福島第1原発事故

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