言ったとおり、あれはやはり核爆発だったようだ 東京電力・福島第1原発事故(第89信)


すでに「取り返しのつかぬ今」を
もはや「取り返しのつかぬまま」見据えながら、
それでもなお、あの愚者たちに殺されないために……


言ったとおり、あれはやはり核爆発だったようだ




 すでに私が、3月25日にアップロードした、当ブログ〔東京電力・福島第1原発事故〕第10信《あれは、ほんとうに単なる「水素爆発」だったのか?》において重大な懸念を表明した、3月14日午後の3号機の大爆発について——。

 その後、やはり、あれは核爆発だったのだという見解が、複数の専門家から表明されるようになってきている。

 この話柄に関しては、いまから提示する情報それ自体、事実上、もはや旧聞に属する。
 また、最近1箇月余りのあいだに、当該の情報は少なからぬサイトで紹介されてもいるようだ。

 しかしその重大さからいうなら……そして何より、3月下旬の時点で私が提示した考察を裏づけるものとして、一度は当ブログでも、それについて言及しておく必要があるだろう。
 そんな風にも考え——すこぶる遅くなったが、簡略に記しておく次第である。


 《Can't seal Fukushima like Chernobyl - it all goes into sea——フクシマはチェルノブイリのような訳にはいかない。汚染はすべて海に流れ込んでしまっている》
  http://www.youtube.com/watch?v=x-3Kf4JakWI

 上記の映像で、モスクワに本拠を置くロシアのテレビ局RT(ロシア・トゥデイ)からのインタヴューを受け、語っているのは、当ブログ〔東京電力・福島第1原発事故〕第15信《欧州放射線リスク委員会 Chris Busby 教授インタヴュー》でも紹介している、クリストファー・バズビーChristopher Busby教授(1945年生まれ)である。

 ——このインタヴューは、どうやら、チェルノブイリ原発事故から25年を閲(けみ)した4月25日、放映されたものらしい。
 (画面に登場するバズビー教授は、背景から判断するに、ロンドン・テムズ河畔に佇んでいるようである)

 まず同教授は、あの東京電力・福島第1原発3号機の爆発が核爆発だった可能性を強く示唆した上で、しかも、その事実を東京電力は隠蔽している疑いが濃いとも、さらに燃料は依然として核分裂を続けており、容器も破損しているおそれが高いと推測し、また——このかん、当ブロクで私も指摘しているように——3号機の搭載燃料がプルトニウムを含んでいるものであることとも併せ、その特別の危険性に注意を喚起する。

 いまなお、依然として制御不能の状態が続いているばかりでない。
 現実に計測されている放射線の数値から見ても、被曝の状況はチェルノブイリと比較してすら、極めて深刻であると指摘し、日本政府の避難指示があまりにも不十分なことを憂慮する。

 そして同教授は、 ECRR(the European Committee on Radiation Risks=欧州放射線リスク委員会・本部ブリュッセル )の設定した計算式に基づき、チェルノブイリ事故によって罹患したと推測される癌患者140万人という規模に、(少なくとも)匹敵するであろう人的被害が、今後、日本で発生することが予測されると言明している。

 もちろん、政府や東京電力が提示している「工程表」など、最初から見るに耐えない絵空事であることも、言うまでもない。
 バズビー教授は、それどころか、東京電力・福島第1原発から大気中に飛散し、海洋に垂れ流された放射性物質の影響は、すでにマリアナ諸島やハワイからアメリカ本土にまで、及んでいることを指摘し、政府や東京電力の対応に強い疑念を隠さない……。


 ちなみに、上述の3月25日付の当ブログ〔東京電力・福島第1原発事故〕第10信《あれは、ほんとうに単なる「水素爆発」だったのか?》においては私は、くだんの3号機爆発に関し、とりあえず繰り返し「キノコ雲」という語を出して、事柄の悪夢のごとき深刻さを暗示するまでの表現に、あえて留めておいた。
 それは何より、すでに東京電力からも日本政府からも打ち棄てられたに等しい、福島県浜通り現地の人びとの心情を慮ってのことにほかならない。

 しかしながら、くだんの3号機が、現・福島県知事——佐藤雄平が60億円の交付金と引き換えに受け容れた「プルサーマル計画」の結果、原子炉にはプルトニウムを含むMOX燃料が入っていたことと思い合わせると、問題の「キノコ雲」が、ウラン型原爆であった広島のそれとは異なる、まさしくプルトニウム型原爆であった長崎のそれと同形のキノコ雲であったことにも、この上ない懸念を、私は覚えるものだ。


 また、これよりさらに1箇月近く後——5月17日に、同じくRT(ロシア・トゥデイ)局により、同じくバズビー教授に対して再び行なわれたテレビ・インタヴューは、株式会社東京電力が、いまごろになってようやく、2号機・3号機に関してもぬけぬけと「メルトダウン」を、事実上、認めたことを受けての企画だった。

 この5月半ばのインタヴュー映像を見、日本にいま、生きざるを得ない一員として、改めて衝撃を覚えるよりほかない感覚を味わった。

 というのは、ここで同教授が問題とする中心は、もはや日本や、そこに生きる者が助かるかどうかといった次元に関わるものではなくなっているというニュアンスを明瞭に帯び(——最低限の理性を持ち合わせた者なら、すでにそれが事実上、絶望的とも言えようことは、火を見るよりも明らかだから?)、むしろ、この東京電力・福島第1原発事故という人類史上空前かつ最悪の核被害から、自国ウェールズを含む英国、ヨーロッパ圏——さらに世界がいかに身を守るかであるかの方に、もはや完全に移行している……との印象を受けるという、あまりにも冷厳な事実である。

 《Busby: Fukushima reactors a raging radioactive inferno(Muitiple reactor meltdown fears amid desperate Fukushima salvage op)——バズビー教授「福島原発、桁外れの放射能地獄(複合メルトダウンで、フクシマの救出作戦ずたずたに)」》
  http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=Vz4I5rb3_BM

 ——目下、私自身の時間が極めて乏しいため、いずれの談話についても詳しく紹介する余裕がない。
 (ただ、4月25日のインタヴューに関しては、下記のサイトで、丁寧な日本語訳を参照することができる)

  http://onihutari.blog60.fc2.com/blog-entry-45.html

 (また、上記サイトでは、バズビー教授とは別に、アメリカの元原子力技術者でエネルギー問題の専門家、アーノルド・ガンダーセン氏(Arnold Gundersen)氏が、やはりインタヴューで3号機爆発を「核爆発」と見做す見解を表明している動画を観ることもできる)


 なお、ついでに掲げておくと、

  http://www.youtube.com/watch?v=1Q3ljfLvHww

 は、3月12日の1号機の爆発と、3月14日の3号機の爆発との動画映像を厳密に比較対照することに特化して、両者の根本的な違い——3号機の爆発が、明らかに核爆発であったことを、検証・確認できるようにしたサイトである。


 ……いかにも、以上はすべて、実はすでに最初から判っていながら、いま改めて突きつけられた事実である。
 それらを前に——では私たちは、一体、どうするべきか? 


     〔この項、内容的には次項へと続く〕






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by uzumi-chan | 2011-06-01 02:57 | 東京電力・福島第1原発事故

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