民衆の正しい恐怖と不安を「パニック」などと貶めるな 東京電力・福島第1原発事故(第14信)


すでに「取り返しのつかぬ今」を
もはや「取り返しのつかぬまま」見据えながら、
それでもなお、あの愚者たちに殺されないために……

民衆の正しい恐怖と不安を「パニック」などと貶(おとし)めるな


 
 周知のとおり、福島第1原発事故については、まったく展望の見えない絶望的な事態が続いている。
 これに関して、加害者側である東京電力、菅内閣、経済産業省原子力安全・保安院、それらと共犯関係にあるテレビをはじめとする大手マスメディアのみならず、インターネット上の個人サイトにすら、加害側に連なる没論理的・非科学的な「楽観論」「パニック鎮静論」が散見される。

 ……「最悪のシナリオ」?? 
 何を寝ぼけたことをうそぶいているのか。この言葉貧しい言い回し自体に、すでに無知で不見識、かつ陋劣な作為が見え隠れしている。

 「シナリオ」とは何か? もはや「シナリオ」などではない。
 いま私たちが見つめるべきは、すでに起こっている「最悪の現実」そのものなのだ。

 菅・枝野らを筆頭とする彼らに、そもそも訊きたい。
 巷間言われる「パニック」の、一体、何がいけないのか? 

 真に不安を持つべきとき、真に恐怖すべきときに、そうした反応を示すのは、人間として当然の権利であり、また自他の生命をそれ以上の危機に晒さないための義務でもある。
 正当に「パニックすべきとき」に「パニックに陥ること」を押しとどめる権限など、誰にもない。菅・枝野や、それに連なる「政」・「官」・「財」・「学」・「商業メディア」の誰にも——。

 ましてや、比類なく劣悪な1犯罪企業・東京電力が、不当にも、この国に生きざるを得ない人びとの生殺与奪の権を独占し、何千年にもわたって続いてきた豊かな風土を回復不可能にまで汚染・毀損し、そしていまなお、人びとの生命を一顧だにしていないという、この現在にあっては。

 中・長期的に厖大な人命を毀損しようと、そのときになれば法的責任論や“科学的”因果関係の立証など困難に決まっていると高を括って、日夜、NHKをはじめとする巨大メディアに出演しては、千篇一律の「楽観論」を——しかし、さすがに事態の推移のまずさに焦り始めたのか、姑息にも少しずつ、その言説を修正しながら——垂れ流している、愚鈍な「御用学者」「御用ジャーナリスト」ども。

 “馬鹿の一つ覚え”で、持続的な「被曝」を、「胃のX線撮影」「CTスキャン」、揚げ句の果ては「東京—ニューヨーク間の飛行機1往復分」と比較する、という印象操作の醜行を繰りかえしてきた彼らの言説に、微妙な変化の現われた最初のきっかけの1つがある。

 あの痛いたしくも真摯な東京消防庁ハイパーレスキュー隊の決死の放水作業のあと、現場の最高指揮官だった佐藤康雄・東京都隊総隊長が記者会見で語った、作業中の「呼吸管理」の委細を尽くした論理的説明の冒頭、「外部被曝」と「内部被曝」という2種の言葉と概念とを峻別して説明を施したときだった。
 それが今般の事態のなか、ほとんど初めて、全国民の耳目の集まっている場で「内部被曝」なる言葉が提示された瞬間だったといっても過言ではないと、私は考えている。

 (それ以前にも、NHKの垂れ流し報道で、同じコメンテーターでも、目に余る宣撫工作に終始している「科学文化部」記者・山崎淑行ではない方——ずっと、まともな発言を続けていた水野倫之・解説委員が、あるとき、「もう一つの持続的な被曝」について説明しかけた瞬間……視線をカメラ斜め後方の一角に泳がせ、不意に口を噤んでしまった、という不自然な場面を、私は目の当たりにしてはいるのだが……)

 私見では、決死の放水作業の後の記者会見という、この内外の関心の集中する場で、佐藤総隊長が作業中の「呼吸管理」の重要性に関連しての解説で「内部被曝」の一語を口にしたことは、ある意味、放水作業そのものに優るとも劣らぬ重要な功績だった。
 当事者としての生なましい重みを滲ませつつ、しかも理路整然とした、このかんテレビを埋め尽くしたあらゆる「御用学者」「御用コメンテーター」が束になっても叶わぬ委曲を尽くした説明をもって。

 真に恐怖すべきとき、恐怖するのは、当然の権利であるとともに義務でもある。
 現在、日本のテレビでは決して報じられることのない、下記のような見解が示されていることを、取り急ぎ、情報として提示しておく。

 テヘランに本拠を置くイランのテレビ局、Press TVが、3月24日、ロンドンで、欧州放射線リスク委員会(本部ブリュッセル)のクリス・バズビー(Chris Busby )教授に対して行なったインタヴューである。

  放射能危機に無頓着な日本
  http://www.presstv.ir/detail/171460.html


 (ちなみに、このサイトに掲載されている写真自体も、私は初めて見るものであるが、まさにこの「核被害」のただならぬことを伝える、凄まじい光景である。この映像を、日本の新聞・テレビが報じたことがあったろうか? 寡聞にして、私は知らない)

 とりあえず、英文サイトのURLを上記に記しておくが、下記の翻訳サイトを用いれば、機械翻訳の不備は残るものの、大意は摑んでいただけよう。

  http://www.excite.co.jp/world/english/web/

 バズビー教授の指摘が正しいとすれば、いま起こっていることが、いかに凄まじい終末的な事態にほかならないか、そしてそれを隠蔽・糊塗し続ける、菅内閣・経済産業省・東京電力らの犯罪がいかに悪質なものであるか。愕然とする思いがする。

 (さまざまな事情から、私自身、心身とも余裕に乏しい状態ではあるのだが、可能なら後ほど、上記インタヴューの要旨をまとめてアップロードしておきたい)





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by uzumi-chan | 2011-03-27 23:58 | 東京電力・福島第1原発事故

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