3号機周辺のプルトニウム測定値を、ただちに公表せよ 東京電力・福島第1原発事故(第11信)


すでに「取り返しのつかぬ今」を
もはや「取り返しのつかぬまま」見据えながら、
それでもなお、あの愚者たちに殺されないために……

3号機周辺のプルトニウム測定値を、ただちに公表せよ


 
 周知のとおり、福島第1原発でもこの3号機だけは、今世紀に入ってからの日本では稀有の「名知事」であった前任者・佐藤栄佐久の、あまりに不自然な「収賄」事件による逮捕・辞任を受け、当選・就任した現福島県知事・佐藤雄平(民主党における原発推進派の領袖・渡辺恒三の甥)が、「プルサーマル政策」を受け容れた結果——プルトニウムを含むMOX燃料(二酸化プルトニウムPuO2と二酸化ウランUO2との混合燃料)を搭載している。

 (……これ以上、踏み込んだ「推測」を、いまここで記すことは、私自身、控えたい。
 私は心から、私の懸念が杞憂であることを願っている。そしてそのためにも、下記の情報開示を要請する)

 責任あるはずの「関係者」たちに問いたい。

 この3月14日午後の3号機の大爆発は、原子炉圧力容器そのものが爆発・破壊され、内部の核燃料が大量に飛散する事態ではなかったのか? 

 本日3月25日に公開された、自衛隊による空撮映像でも、3号機上空から圧力容器が目視で「無事」であることを確認しうる根拠は、まったくない。何しろ、爆発で「ぐにゃぐにゃ」になった鉄骨や瓦礫が、原子炉上部を厚く覆っているのだから。

 にもかかわらず、たとえばNHK総合19時のニュースに出演した岡本孝司・東大大学院教授をはじめ、あまたの「専門家」たちが、その映像に関してひたすら「水蒸気爆発」の“威力”のみを語り続け、より深刻な事態の可能性に言及しないのはなぜか? あの映像のみで、何が分かるのか。
 「素人目」にも、明らかに1号機の爆発とはその様相を異にする3号機の大爆発を、彼ら「専門家」が、こともなげに「水蒸気爆発」と片づけ得る根拠は、一体、何か? 

 ……ちなみに私は、一般的に「素人」の感情や直観を、「玄人」のそれよりも尊重する。

 かつて血友病のため使用し続けた血液製剤の結果、「薬害エイズ」の被害者となり、日本で初めて実名を公表、「原告第1号」として「薬害エイズ」問題を訴え続けた書家の赤瀬範保さん(1936年—91年)が、かつて、書き上げたばかりの自作の批評を伴侶に求めながら「素人の批評というのは鋭いものなのだ」と註釈していることを知ったとき、私はその見識に打たれたものだが——こと藝術批評に限らず、むしろこうした生死にかかわる重大な事態に関して、いっそう、「素人」の不安や懸念は尊重されなければならないだろう。

 たとえそれが結局のところ「杞憂」であったとしても、かくも重大な事態に際しては、人は「正しくパニックに陥る」権利があると、私は考える。
 そして「専門家」や権力者たちは、その権利に、自らの全存在を賭して誠実に答えるべき義務がある——とも。

 現状が、まったくその対極の腐敗・怠慢ぶりしか晒していないのは、すでに周知のとおりである。

 事態がそれでもなお、最悪の終末的局面の手前でまだ踏みとどまっているのかもしれない、と私が考え得る(また考えたい)根拠は、ただ——東京電力や原子力安全保安院、また文部科学省その他、広義の「加害側」だけではなく、首都圏で、心ある市民団体や個人が発表している放射線測定データに、目下のところはまだ深刻な変化が見られていない、という一点だけだ。
 しかしながら、それだけではなお……私の理解では、ヨウ素131やセシウム137、セシウム134に比して質量が大きく、結果的に飛散速度に差異があると聞く、プルトニウムの漏出の可能性に関しての不安は、依然として拭えない。

 東京電力、ないしは経済産業省の内部機関たる原子力安全保安院は、ただちに福島第1原発3号機周辺のプルトニウム測定値を公表せよ。
 それは、これだけの甚大な核被害を日本に生きる(生きざるを得ない)人びとと、その周辺各国、さらには(程度の差こそあれ)少なくとも北半球全般にもたらした加害者としての喫緊の責務である。

 繰り返す。

 東京電力、ないし日本政府はただちに、福島第1原発事故に伴って、当然、計測しているべきはずのプルトニウム測定値を公表せよ。

 (また付随して、放射線測定結果に関しては、今後、すべて核種を明示しての発表とせよ)




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by uzumi-chan | 2011-03-25 22:35

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