“彼らが最初、大阪市職員たちを攻撃したとき……” テレビ・大衆文化(第11信)
2011年 11月 29日
すでに「取り返しのつかぬ今」を
もはや「取り返しのつかぬまま」見据えながら、
それでもなお、あの愚者たちに殺されないために――
“彼らが最初、大阪市職員たちを攻撃したとき……”——大阪“W選挙”結果の意味するもの〔後 篇〕
3・11——大地震、大津波に続いた東京電力・福島第1原発事故の後、そしてTPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement=環太平洋戦略的経済連携協定)参加が強行されようとしている現在、私たちを涵(ひた)す状況のいっさいは、なんと危険を極めていることだろう。
2009年の晩夏、鳩山由紀夫・民主党政権の発足時、その状況がもしも——万一、最悪の形で暗転するとしたら、それはヴァイマール共和国が終焉し、ナチス・ドイツが擡頭(たいとう)してきたようなプロセスをたどることになると予測した。
そして、いま、それが来ている。
現・東京都知事よりも、小泉純一郎よりも危険なポピュリストの独裁者によって。
今回、「大阪維新の会」なる政党の公約のなかには、とってつけたような「脱原発」風の文言も盛り込まれていたらしい。
だが、「脱原発」は、そもそもファシズムとは根本的に相容れない。
換言するなら、ファシズムによっては、真の「脱原発」などできない。
なぜなら、原子力発電に反対することは、本質的にヒューマニズムの問題だからだ。
「 民意を無視する職員は大阪市役所から去ってもらう」——??
この胴間声(どうまごえ)の恫喝に快哉(かいさい)を叫び、屈折した溜飲(りゅういん)を下げているらしい大衆に……いまさら引用するのも気が引けるが、ドイツの牧師マルティン・ニーメラー(Friedrich Gustav Emil Martin Niemöller/1892—1984年)の、あまりにも有名な詩——『最初に、ナチスが共産主義者たちを捕らえたとき Als die Nazis die Kommunisten holten,』を贈ろう。
Als die Nazis die Kommunisten holten,
habe ich geschwiegen;
ich war ja kein Kommunist.
最初に、ナチスが共産主義者たちを捕らえたとき、
私は声を上げなかった。
なぜなら、私は共産主義者ではなかったから。
Als sie die Sozialdemokraten einsperrten,
habe ich geschwiegen;
ich war ja kein Sozialdemokrat.
次に、やつらが社会民主主義者たちを投獄したときにも、
私は声を上げなかった。
なぜなら、私は社会民主主義者ではなかったから。
Als sie die Gewerkschafter holten,
habe ich nicht protestiert;
ich war ja kein Gewerkschafter.
それから、やつらが労働運動家たちを捕らえたときにも、
私は抗議しなかった。
なぜなら、私は労働運動家ではなかったから。
Als sie die Juden holten,
habe ich geschwiegen;
ich war ja kein Jude.
さらに、やつらがユダヤ人たちを捕らえたときにも、
私は声を上げなかった
なぜなら、私はユダヤ人ではなかったから。
そして、ヴァージョンによっては、ナチスの標的とされたカテゴリに「障害者・病人」と「カトリック教徒」が続き——マルティン・ニーメラーの詩『最初に、ナチスが共産主義者たちを捕らえたとき』は、こう結ばれる。
Als sie mich holten,
gab es keinen mehr, der protestieren konnte.
最後に、やつらが私を捕まえたとき、
もはや抗議できる者は誰もいなかった。
この詩の最初——第1連の「共産主義者たち」を、とりあえず「大阪市職員たち」と読み替えてみよう。
そうすれば、いま起こりつつあることの意味が分かる。
ファシズムとは、軍服を着、武器を携えてだけ、やって来るのではない。
それは、むしろファシズムの最後の姿なのであり、実際にはそれよりずっと早く、擬似的な「市民社会」の顔をして始まっているものなのだ。
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by uzumi-chan
| 2011-11-29 12:31
| テレビ・大衆文化