欺瞞に充ち満ちたNHK『あさイチ』“誤報”発表 東京電力・福島第1原発事故(第167信)
2011年 11月 25日
すでに「取り返しのつかぬ今」を
もはや「取り返しのつかぬまま」見据えながら、
それでもなお、あの愚者たちに殺されないために――
二重、三重、四重の欺瞞に充ち満ちた、NHK『あさイチ』“誤報”発表
なぜ、かくまで度し難い、重層的な欺瞞に充ち満ちたメディアなのか。
平然と“公共放送”を標榜する、“あれ”は——。
すでに、当ブログ〔東京電力・福島第1原発事故〕第152信《放射線のごとく瀰漫(びまん)する輿論(よろん)操作》(2011年10月23日04:03アップロード)と、同・第153信《あきれ果てた民衆蔑視のNHK『あさイチ』》(2011年10月23日06:50アップロード)とで、その……到底、受け容れ難い虚偽と、異様な情報操作ぶりとを私が指摘した、10月17日放送のNHK総合テレビ『あさイチ』の「メインテーマ」コーナー『放射線大丈夫? 日本列島・食卓まるごと調査』の「実験結果」——「常識を覆す驚きの数値」に関して、その問題性が明るみに出てきつつある。
しかも——この期に及んでなお、何重もの奇怪な曖昧さに塗りこめられた、異様な形で。
最初に、『毎日新聞』の報道を引いておこう。
これは内容的にも最も詳しく分量も多い上、同局の幹部2名の談話が採られていることにより、今回の一連の事態を、この“公共放送”がどのように糊塗しようとしているかが手に取るように看取される、そうした内容となっている。
《〈NHK〉あさイチの放射性物質量の数値誤りを「大変申し訳ない」と陳謝
NHKは24日、情報番組「あさイチ」の10月17日放送内の特集「放射線大丈夫? 日本列島・食卓まるごと調査」で発表した放射性物質量の数値が誤っていた問題について同局の金田新・放送総局長が定例会見で「大変申し訳ないことだと思います。非常に初期的なミスのような気がします。二つの機関にお願いするとか、重厚な予算で組めばよかったんですが、そういうことでもなかった。我々にも責任があると思います」とコメントした。
同局によると、番組では福島や東京など全国の7家族の食事に含まれる放射性物質量を専門機関で測定。放送後、視聴者からの指摘で再検証したところ、この放送で食事から検出されたとしていたセシウム134は検出限界以下、セシウム137も放送した数値よりやや低い値だった。この誤りについて分析装置の調整不備が原因としており、24日の放送では、12月15日放送の番組内でカリウム40の再検証結果と、経緯などを報告するとしていた。
新山賢治理事は、今回の経緯を「(放射性物質量の測定)装置の設定過程でミスがあった。セシウム134とセシウム137を計ろうとしたが、同じ放射線を出し自然界にもある元素のビスマス214に設定値が合ってしまった。数値に間違いがあった」と説明。専門家からも間違いの可能性を指摘する声があり、再測定が行われたという。また「計り直したが健康には害のないNDというゼロに近い数値だった」と強調したが、「大変深刻な問題。真摯(しんし=ルビ・原文)にお伝えして(番組を)継続してやっていこうということ」と話した。
金田・放送総局長は「日々我々が食べているものを測定してみたいという、切り口は斬新なので、やってみることを抑制するようなことはしたくない。間違わないようにちゃんとやれと」と制作現場をフォロー。一方で「受信料でやっていくには限界がある。もっと統計的に優位な形でやる作業は別のもの。本来はなんらかの公的なところ、税金の中でやっていただくことかなと。我々がやるのを見て、社会的に意義がありそうだと思っていただければ、それも我々の役目」と話した。》
(毎日新聞デジタル 11月24日(木)18時48分配信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111124-00000016-mantan-ent
上掲・記事の内容については、NHK幹部のメンタリティの問題を含め、思うところは少なからずあるが——後述する。
以下、『朝日新聞』『讀賣新聞』『産経新聞』は、ほぼ似たり寄ったりの内容である(『産経新聞』が、やや詳しい)。
《NHK「あさイチ」で放射線測定ミス 番組内で謝罪
NHKは24日、10月17日に放送した情報番組「あさイチ」の企画「放射線大丈夫? 日本列島・食卓まるごと調査」で放送した、食品に含まれる放射性物質量の数値に誤りがあったとして同番組内で謝罪した。
問題の調査は、福島県や東京都など全国の7家族の食事をサンプルに、首都大学東京の研究室でセシウムなどの数値を調べたもの。
放送後、この結果について誤りではないかという指摘が寄せられ、再検証したところ、4家族の食事について、自然界にも存在する別の放射性物質の数値を、セシウム134の数値として公表していたことがわかったという。また、1家族のセシウム137の数値についても、当初の放送とは異なる数値だった。ミスの原因についてNHKは「分析装置の調整の不備」としている。》
(『朝日新聞』電子版/2011年11月24日11時9分)
http://www.asahi.com/showbiz/tv_radio/TKY201111240117.html
《NHKあさイチが放射線測定ミス……番組でおわび
NHKは24日、朝の情報番組「あさイチ」で、10月17日放送の「放射線大丈夫? 日本列島・食卓まるごと調査」について、食事に含まれる放射性物質量の数値を誤って放送したと発表し、同番組内で謝罪した。
番組ホームページなどによると、問題の放送は、福島県や東京都などに住む全国7家族の食事サンプルを検出器にかけて分析し、放射性セシウムの数値などを測定する企画。
当初の放送で、食事サンプルから検出したとされたセシウム134の量は、再検証の結果、検出限界値以下の数値であり、信頼出来るデータではなかったという。原因は分析装置の調整不備としている。
NHKは、12月15日に、なぜこうしたミスが起きたのかを検証する番組を放送する予定。》
(『読売新聞』電子版/2011年11月24日08時58分 )
http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20111124-OYT1T00190.htm
《NHK「あさイチ」で放射線量測定ミス、番組中におわび
NHKは24日、朝の情報番組「あさイチ」で、10月17日放送の「放射線大丈夫? 日本列島・食卓まるごと調査」の中で、食事に含まれる放射性物質量の数値を誤って放送したことを明らかにし、同番組内で謝罪した。分析装置の整備の不備が原因という。
番組では、北海道から広島までの全国7家族から提供された食事サンプルを「ゲルマニウム半導体検出器」にかけ、放射性セシウムの数値などを測定。放送では、4家族のサンプルから1キログラムあたり3.39~5.69ベクレルのセシウム134が検出されたとしたが、外部から「数値が不自然という」との指摘があり、再調査。その結果、検出されたのは別の放射性物質で、セシウム134は検出できる下限以下の値だったことが分かったという。
NHKは12月15日に、ミスを検証する番組を放送する予定。》
(『産経新聞』電子版/2011.11.24 11:43)
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/111124/ent11112411440011-n1.htm
……いずれの新聞が伝えるところも、なんという奇妙な話だろう。
今回の場合、これは記事を書いている記者の責任では、おそらくない。
そもそもNHKの発表それ自体が、受け手に混乱しか与えない、奇怪な印象操作に満ちたものなのだ。
問題の検査数値の誤りに関しては、NHKの当該番組『あさイチ』のサイトそれ自体に、現在、以下のような「表」が載っている。
それを見ると、ますます事の奇怪さが明確になってくるようだ。
http://www.nhk.or.jp/asaichi/2011/10/17/01.html
前回放送した誤った数値 再検証後の数値
<セシウム134>
札幌 5.69Bq/kg → ND(検出限界:8.2Bq/kg)
須賀川 3.66Bq/kg → ND(検出限界:5.7Bq/kg)
江戸川 4.05Bq/kg → ND(検出限界:5.2Bq/kg)
岸和田 3.39Bq/kg → ND(検出限界:4.5Bq/kg)
<セシウム137>
目黒 8.97Bq/kg → 8.5Bq/kg ※誤差1.9Bq/kg
(検出限界:5.2Bq/kg)
《当初、放送で発表した数値に誤りがあったことがわかりました。原因は、分析装置の調整の不備です。なお、検出されたデータそのものに不備はなかったということです。装置の再調整は、別の専門機関の協力も仰ぎ、二重のチェックを行いました。この度は、誤った数値を公表し、申し訳ありませんでした。》
……あまりにも、奇妙である。
これを、そもそも「数値が誤っていた」と規定するのが、適切なのかどうか。
〔この項、続く〕
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by uzumi-chan
| 2011-11-25 21:08
| 東京電力・福島第1原発事故