城南信用金庫に支持と連帯を 東京電力・福島第1原発事故(第59信)
2011年 04月 21日
すでに「取り返しのつかぬ今」を
もはや「取り返しのつかぬまま」見据えながら、
それでもなお、あの愚者たちに殺されないために……
城南信用金庫に支持と連帯を
(……もっと早く取り上げておきたかった話題であったにもかかわらず、個人的な事情ですっかり遅くなってしまった)
日本の1金融機関が「脱原発」を宣言したことが、巨きな反響を喚んでいる。
東京都南西部から神奈川県東部にかけ、全85店舗が展開する城南信用金庫である。
城南信用金庫は、信用金庫としては業界で最大手、全国第2位の規模を誇る。2001年、京都中央信用金庫が、経営破綻した京都の他の2信用金庫の業務を譲り受けた結果、抜かれるまでは、全国第1位だったという。
そもそも前世紀の初頭(1902年)にその前身が設立されて以降、今回の東日本大震災に到るまで、独自の社会貢献をしてきている(今回の震災での義捐金は3億音円)し、またその地域金融業としての経営理念は、日本の金融機関一般とは隔絶した、高邁な理想主義に裏打ちされたもののようだ。
しかしながら、業種を問わず、従業員2000名以上という企業が、企業理念として「脱原発」を標榜するのは——当ブログでも、繰り返し述べているとおり——この日本の精神風土にあっては、極めて異例なことと言えよう。尋常ならざる勇気を必要とする決断だったにちがいないとも推測する(金融機関という業種は、とりわけその度合いが強いかもしれない)。
詳細は、下記の同信用金庫のウェブサイトで確認することができるが、
http://www.jsbank.co.jp/topic/pdf/genpatu.pdf
そのマニフェストを、ここにも掲げておこう。
(単に「公約」と言えば良いものを、わざわざ「マニフェスト」と称してみたがる愚かな既成政党のそれらと違って、城南信用金庫のこれこそ、真に「マニフェスト」——「宣言」と呼ぶに相応しい、平易にして格調高い文章である)
《原発に頼らない安心できる社会へ
城 南 信 用 金 庫
東京電力福島第一原子力発電所の事故は、我が国の未来に重大な影響を与えています。今回の事故を通じて、原子力エネルギーは、私達に明るい未来を与えてくれるものではなく、一歩間違えば取り返しのつかない危険性を持っていること、さらに、残念ながらそれを管理する政府機関も企業体も、万全の体制をとっていなかったことが明確になりつつあります。
こうした中で、私達は、原子力エネルギーに依存することはあまりにも危険性が大き過ぎるということを学びました。私達が地域金融機関として、今できることはささやかではありますが、省電力、省エネルギー、そして代替エネルギーの開発利用に少しでも貢献することではないかと考えます。
そのため、今後、私達は以下のような省電力と省エネルギーのための様々な取組みに努めるとともに、金融を通じて地域の皆様の省電力、省エネルギーのための設備投資を積極的に支援、推進してまいります。
1 徹底した節電運動の実施
2 冷暖房の設定温度の見直し
3 省電力型設備の導入
4 断熱工事の施工
5 緑化工事の推進
6 ソーラーパネルの設置
7 LED照明への切り替え
8 燃料電池の導入
9 家庭用蓄電池の購入
10 自家発電装置の購入
11 その他
以 上 》
これこそが正論であり、人間の言葉というものだろう。論理的にも、倫理的にも。
いま1つ、この決断を淡淡と語る、同・信用金庫の吉原毅・理事長のメッセージも素晴らしい。
以下で、その動画映像を観ることができる。
http://www.youtube.com/watch?v=CeUoVA1Cn-A
なんという、まっすぐな言葉。明晰な思考。揺るぎない人格性。
ここには、真実の人間の言葉、まっとうな思想というものが静かに満ち溢れている。このかん、東京電力福島原発事故の発生以来、耳にしたあらゆる談話のなかで、最も見事なものの1つであった。
(吉原毅理事長は、その表情、居住まいからして、東京電力会長・社長・何人かの副社長らの「人を人とも思わない」態度とは、天と地ほどの隔たりを感じさせる)
それにしても、いくら業界最大手とはいえ、1信用金庫がこのような意思表示・態度表明をするのは、容易なことではあるまい。
私がこの報に初めて接したのは、4月8日の発表からほどなく——たぶん4月10日前後、インターネットのニュースによってであったはずだが、いま、どうしてもそのサイトが見つからない。
代わりに14日付の、下記のニュースを引いておく。
http://www.j-cast.com/2011/04/14093150.html
ただし、引用しておいて申し訳ないが、同記事・冒頭の《とかく、お固い印象の金融機関が「脱原発」を宣言した。》というのは、「まったくいただけない」。
文章の調子が下世話であるとかないと論(あげつら)う以前に、これはもはや「とかく、お固い印象の金融機関が」といった次元の問題ではないだろう。
東京都に55店舗(いずれも都心から南部・西部)・神奈川県内に30店舗という、業界第2位の経営規模は、同時にある意味で巨きな足枷でもあるはずだ。
誰しも、「霞を食って」生きているわけではないからである。
Au lieu que les Bergers, c'est dro^le,
Meurent a`peu pre´s par le monde.
ところがこいつはおかしなことだが、
羊飼まで、大概はこの世の苦労で死んでゆく。
(A・ランボオ『忍耐の祭』1「五月の軍旗」第2連から/粟津則雄訳。赤字部分は、訳文では傍点)
——私がランボオのなかでも最も感嘆する詩行の1つを引いた。十代でこういうことを書くから、私はこの詩人が好きだ。
(フランス語のフォント・入力システムを持っていないため、字上符の表示に不具合が生じている点、寛恕を請う)
むろん営利事業であるからには、あらゆる意味で「完璧な企業」など、あるはずはないとも、私とて考えてはいる。
しかしながら同時に、この地上に存在する以上、いささかでも「まし」な生き方、あり方をしているものを支持したいとも、私は思う。
事は、当ブログ・前項——〔東京電力福島第1原発事故〕第58信《「地球を賭けて何」……》にも記したとおりである。
3大メガ・バンクが総力を挙げて東京電力への支援を表明している現在——東京電力との互恵関係のなかで日本経済が成り立ってもいる状況下、いくら業界大手とははいえ、1信用金庫が「脱原発」のマニフェストを掲げるのが、いかに困難なことか(経営的には、城南信用金庫は、みずほフィナンシャルグループの系列に連なる)。
——ちなみに、城南信用金庫の総資産は、およそ3兆1千億円ほど。
みずほ銀行は約72兆円、三井住友銀行は約120兆円、三菱東京UFJ銀行は約150兆円だという。
今後、事態が推移するなかで、城南信用金庫に有形無形、相当な圧力が加わる可能性もないとは言えない。
だが、こうした声を上げた企業が、万が一にも潰されるようなことがあっては、絶対にならない。
こうした企業——金融機関は、日本民衆がなんとしても守りたい。
是が非でも、城南信用金庫と吉原毅・理事長を支持し、連帯したい。
これは、1つの闘いなのだ。
全85店舗は、東京都にある55店(いずれも都心から南部・西部)・神奈川県の30店(いずれも東部)と、地域的に限られる。
しかし全国各地から、城南信用金庫へ共感の声を届けるだけでも、決して無意味ではないだろう。
私に、金融機関を「支援」するような財力があるはずもない。
ただ「支持」と「連帯」を表明し、併せて、いくばくかの預金をすることはできる。
私自身、数日中に城南信用金庫に口座を開設し、他行から、ささやかではあるが預金を移すつもりでいる。
城南信用金庫ウェブサイトのトップページは、下記のとおり。
http://www.jsbank.co.jp/
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by uzumi-chan
| 2011-04-21 01:54
| 東京電力・福島第1原発事故