聞き棄てならない話 東京電力・福島第1原発事故(第52信)


すでに「取り返しのつかぬ今」を
もはや「取り返しのつかぬまま」見据えながら、
それでもなお、あの愚者たちに殺されないために……


聞き棄てならない話——菅政権の命脈を断つべき細野豪志発言 〔その1〕



 
 ……今回の1篇(字数の関係で、2通に分割する)は、どうタイトルを付すべきか、迷った。いまでも、これが最適のものとは思えない。
 ちなみに「国民を欺いて滅亡の淵に立たせていた事実を、こともなげに公言する菅直人政権」>——これが当初のタイトルだった。
 いまさらながら、菅直人政権なるものは、どんなに指弾しても足りない、非道な政権である。

 ここ6日ほどの長きにわたって、若干の事情から、当ブログの更新に手を着けることができずにいた(これについては、たぶん明日か明後日、別項で少しだけ述べる)。
 しかしそのかんにも書いておくべき事象は次つぎと発生・継起し、その結果、目下のところ、都合30篇余りの草稿が山積する状態となってしまっている。
 事柄の性質上、時機の関係からすると、残念ながら最終的にはアップロードを見送ることになる話柄も、少なからずあるかもしれない(せっかく準備したものなので、できれば、そうはしたくないのだが……)。

 だが、それら溜まっている草稿の処理より先に、とりあえず更新を再開するにあたって、何を措いても、ぜひとも緊急に言及しておかねばならない問題が出来(しゅったい)した。
 このかんの福島第1原発事故をめぐる要諦に関わる、大問題である。

 本日4月16日、メディアで突如として「首相補佐官」細野豪志(本年1月以来現職)が登場し、福島第1原発事故をめぐって、かつて現政権の誰にもなかったほど饒舌に、3月11日の地震・津波発生直後からの経緯をしゃべりつづけた。
 例によって愚昧宰相・菅直人が濫造しつづけるポストの1つ、「原発事故担当大臣」なる席の宛てがわれる手筈になったとも聞く、そのことがよほど嬉しかったのか、懐旧譚風の手柄話めいて開陳していた、その細野の話など、おおむね真っ当な人間ならすべて予想し得た範囲内のことで、驚くには当たらないが、少なくとも1点、聞き棄てならない内容があった。

 以下、2本ほど、インターネット上の報道を引く。


 《細野豪志首相補佐官は16日午前のBS朝日の番組で、東京電力福島第一原子力発電所の事故発生直後の状況について、「どん底までいった。ほとんど制御不能のところまでいった」と述べ、一時、かなり危機的な事態に陥っていたことを明らかにした。
 その上で、「少しずつだが、コントロールできるようになった。冷却機能の回復という大きな壁を乗り越えないといけない」と強調した。》
  (『読売新聞』電子版2011年4月16日13時49分/青字への変更は引用者)

  http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110416-OYT1T00375.htm


 《細野豪志首相補佐官は2011年4月16日、BS朝日の「激論!クロスファイヤー」に出演し、福島第1原子力発電所について、「どん底まで行った。ほとんど制御不能のところまで行った」と、一時は危機的な状況となっていたことを明らかにした。1号機が3月12日に水素爆発、3号機も14日に水素爆発で大きく損傷、さらに4号機が15日爆発した当時の緊迫した場面を念頭に置いた発言とみられる。
 また、事故の収束の見通しについては、目標を4月中にも示すと説明した。》
  (J CASTニュース 2011年4月16日 18時25分/同前) 

  http://www.excite.co.jp/News/society_g/20110416/JCast_93318.html


 (その後、正午を跨いでのテレビ東京『田勢康弘の週刊ニュース新書』に出演した際も、細野の同様の口吻は続いていた——)

 自ら得得として披瀝する、これがどういうことなのか。
 いま、自分が何を言っているか、この「首相補佐官」には、分かっていたのだろうか? 

 「やはり、思ったとおりだったのだ!」
 ——そう、日本国民をはじめ、内外の人びとは深い絶望と憤怒をもって感得したことだろう。

 上掲引用中でも、私は事態が最も危機的緊張の度を高めた——細野の言葉を用いるなら「どん底まで行った。ほとんど制御不能のところまで行った」のは、3号機の「爆発」(“水素爆発”? “水蒸気爆発”? ……あるいは?)の発生した、2011年3月15日午後以降のことであったと考える。

 この「首相補佐官」——今週中には「原発事故担当大臣」にも任命されると取りざたされている細野の述懐には、いかにもそのとおりだったであろうと、私を含め、多数を納得させるものがある(ただしそのことと、細野地震の立場に伴う責任の問題とは、まったく別である)。
 
 しかも、そのかん、菅直人や枝野幸男らは、なんと言いつづけていたか? 

 「大丈夫」「ただちに危険はない」「原子炉の状態に巨きな異変は見られない」と——空ぞらしくも繰り返し、私たちに説明しつづけていたのではなかったか? 

 これは何だ? 
 原発が「制御不能」となったら、どうなるのだ? 
 そして経済産業省原子力安全・保安院の審議官・西山英彦をはじめとする官僚たち、東京電力幹部、NHKを筆頭とするマスメディア、それらを埋め尽くした「御用学者」たちは……? 

 おまえたちは、私たちを騙していたのだな? 
 それを、早くも公然と認めているのだな? 

 (……むろん、そんなことは、私たちも最初から気づいていた。
 ただおまえたちが、それを決して認めようとしないできただけだ)

 菅や枝野や細野らごときより、こと原発問題に限ってすら、はるかに知見も見識も高い人びとを含む——そして一人一人が「主権者」のはずの日本国民をはじめ、この国に生き、生きざるを得ない人びとの生命は、その期間、いまだかつてない危険に最も高い可能性において曝(さら)され続けていた。緊急の不安と懸念を表明しつづけた、その人びとを欺いて、精確な情報を徹底的に遮断し、事態を隠蔽しつづけた政府によって。
 このかん菅直人らが停止することをせず、むしろ積極的にその維持・拡大になりふり構わず邁進してきた原子力発電事業の愚かしさの結果、この国の主権者をはじめとする厖大な人命が——。

 しかもそれをいま、私たちは、その政府の中枢に位置しつづける一員たる「首相補佐官」(たわけたことに、遠からず「原発事故担当大臣」に就任するという——?)の口から、平然とした、こともなげな、ぬけぬけとした調子をもって聞かされている。
 事故発生から37日もが経過しながら、何一つ事態が打開してもいないという状況下。

 これは何だ? この政府は何なのか? 
 少なくとも主権者である日本国民は、なぜ本日の細野の看過すべからざる重大な発言を、黙って聞き流すのか? 
 国民を欺き、死地に追いやろうとしていたことを自ら平然と告白しているに等しい、この発言を? 

 思ったとおり、あの3月15日前後、菅直人政権は原発事故においてこれまでの過程で最大最悪の事態となる危険があったにもかかわらず、それを隠し通していた。
 多くの懸念を表明する多くの声をはねつけ、人命の重みを意に介さず「パニック防止」という民衆蔑視の言い分けのもと、その実、政権の保身をのみ図っていた。


     [字数の関係で、〔その2〕へ続く]








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by uzumi-chan | 2011-04-17 02:30 | 東京電力・福島第1原発事故

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