サルコジ大統領の緊急来日と“「御用学者」以前”の手合いの貧しさ 東京電力・福島第1原発事故(第21信)
2011年 03月 30日
すでに「取り返しのつかぬ今」を
もはや「取り返しのつかぬまま」見据えながら、
それでもなお、あの愚者たちに殺されないために……
サルコジ大統領の緊急来日と“「御用学者」以前”の手合いの貧しさ
昨夕、報じられた「世界第2の原発大国」フランスのサルコジ大統領の来日が、予定どおり行なわれるようだ。「被害拡大防止に向けた専門家派遣などの協力を表明するとみられる」という(共同通信/2011年3月29日 18時03分 更新)。
往年のアンドレ・マルローなどともまったく様相を異にする、この新しい「フランス保守」の典型的な思考の持ち主たる政治家については、むろん私は基本的な価値観・世界観を大きく異にする。
だが、それでも今回の大震災と、それにつづく核被害の後、最初に来日する外国元首としての“行動力”については、私は「一定の」評価を惜しむものではない。
たとえ、それが後述するように、自国の「原子力産業」の顧客に対する「フォロー」の意味を持つものであっても——同時に、フクシマが単に日本1国のみならず、地球的規模の危機であるという認識の現われでも、それはあらざるを得ないだろう。
愚昧宰相・菅直人とは雲泥の差にほかならない。
少なくとも現在の日本の危機的状況について、国内での対応が、東京電力の隠蔽、および菅内閣の無策により、万策尽きつつある現在、「世界第1の原発大国」アメリカの援助と同様、「世界第2の原発大国」フランスの支援にでも期待するしかないというのが偽らざる現実である(むろん、これらはとりもなおさず「核大国」そのものをも意味しているが)。
(ただ、あの——出来の悪い公卿の末裔のような間抜け面をした菅直人が、例によってのだらしない薄笑いを浮かべつつ、嬉嬉としてサルコジに歩み寄り握手を求める姿が、いまから容易に眼に浮かぶのは、幾重者もの意味で、なんとも胸の悪くなることではあるが……)
それに先立って本日、フランスを代表する「原子力企業」AREVA(アレヴァ)のアンヌ・ロベルジョン社長兼CEO(最高経営責任者)が、福島第1原発事故対策支援のため、来日した。
まず言っておかねばならないことは、このAREVAが、そもそも福島第1原発3号機のプルサーマル計画におけるMOX燃料加工を請け負ってきた——その意味では、有り体にいうなら「共犯関係」を続けてきた企業であるということだ。
この簡潔な事実は、昨今の日本の御用学者たちの欺瞞の問題にも関係する(——後述する)。
それにしても、成田に到着したロベルジョン社長兼CEOにインタヴューしながら、彼女が現在の日本の「悪い状況について話し合う」と語っているはずの言葉を「原発の状況について話し合う」とすりかえたテロップを流す、NHK夜9時のニュース(『ニュースウオッチ9』などという恥ずかしい名称がついている)の姑息さは、何?
ところで、今夜のこの番組には、このかん、これまでも何度かNHKに出演している大阪大学大学院教授・山口彰がコメンテーターとして登場しているのだが、このかん人間に対しても自然に対しても、核被害の及ぶことへの痛みをなんら覚えていないらしい、夥しい御用学者や御用ジャーナリストで埋め尽くされてきたテレビ番組のなかでも、今回の山口彰発言の不見識には、改めて愕然とせざるを得ない。
事故の現況と今後の見通しについても、その根拠のない「楽観論」には由由しきものがあったが、そもそもそれ以前の問題がこの大阪大学大学院教授にはあることが明るみに晒されたのだ。
——なぜ、いままで菅と東京電力は、かくも事態を拱手傍観し、同時に事態を国民大衆の目から隠蔽しつづけてきたのか。
すでに少なからぬ人びとが「手遅れかもしれぬ」と感じざるを得ない段階にいたって、ようやくフランスやアメリカの援助を受け容れる、との話が浮上してくるのか。
ニュース・キャスターとしての資質と誠実に、日頃から少なからぬ疑問を呈さざるを得ない、そのキャスター青山祐子ですら「もう少し早く外国の援助を頼めなかったのか」との、当然の問いを投げかけた、
それに対し——「原子力が専門」とわざわざテロップが出る、この大阪大学大学院教授・山口彰は「停電で情報が外国に伝わっていなかったから」(??)外国の対応が遅くなったが……などと、気の遠くなるような恥知らずな見解をぬけぬけと垂れ流したのである。
インターネット上でも、いかに諸外国が地震につづく原発事故発生の当初から、日本政府と東京電力、さらに言うなら幇間的な御用学者たちの楽観論というより無頓着ぶり・無神経さ・鈍感さ・隠蔽工作を疑問視し、批判してきていいたか。専門家の派遣、ホウ素剤の提供や、作業用ロボットの貸与をはじめ、貴重かつ重要な申し出をしてきていたか。
そんなことは、最低限のコンピュータ環境に恵まれていさえすれば、中学生でも承知していた自明の事実だった。
言うに事欠いて「停電で情報が外国に伝わっていなかったから」とは……。
この「原子力が専門」の大阪大学大学院教授は、原発どころか、電気の基本的知識すらないのか?
AREVAには、れっきとした「日本支社」もあり(それは当然だろう。日本にMOX燃料を売りつけているのだから)、そのオトベール日本支社長自身が、この大阪大学大学院教授の出演の前に、同じ番組でインタヴューに答えてもいるのだが。
「停電で情報が外国に伝わっていなかったから」(??)外国の支援対応が遅くなった、と、この「原子力に詳しい」大学教員は、本気で信じ込んでいるのか?
《米調査機関ピュー・リサーチ・センターは30日までに、主要な新聞、テレビなどによる最近の報道のうち、どれに最も関心を持って見たかを尋ねたところ、東日本大震災と答えた人が57%に上り、他を大きく引き離したとの調査結果を発表した。》
《14〜20日の主要メディアの全報道量に占める各ニュースの割合は、東日本大震災が57%とトップで、2位のリビア情勢(13%)の4倍以上となった。》
(ワシントン発「時事」2011年3月30日 15時45分)
この山口彰という男は、ほんとうに「学者」なのか? それも“原子力に詳しい”——?
というのは、菅直人並みの、原子力についての「詳しさ」か?
この地上に、いま少し「人間」として存在しようという気はないのか?
インターネットの発達によって「知識のプチブル」(かつて、ある大学教員に関し、ある詩人・小説家が用いた評言)たちの特権性は、急速に低下している。
それはアメリカの軍事技術として発達したインターネットの、一方で皮肉な「功績」でもあるだろう。
事実、この官製「デマ」が溢れ、テレビが何一つ、真実を報じていない、極めて高度なメディア・リテラシーを携えることをすべての者が要請されている現在において、インターネットがなければ、私たちの置かれている状況は、十五年戦争末期の大日本帝国大衆と選ぶところがなかった。
(この情報操作の問題については、近く別項を設けて詳述する)
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by uzumi-chan
| 2011-03-30 23:35
| 東京電力・福島第1原発事故