欧州放射線リスク委員会 C. Busby教授インタヴュー 東京電力・福島第1原発事故(第15信)
2011年 03月 28日
すでに「取り返しのつかぬ今」を
もはや「取り返しのつかぬまま」見据えながら、
それでもなお、あの愚者たちに殺されないために……
欧州放射線リスク委員会 Chris Busby 教授インタヴュー
初めに付言しておくなら、今回のインタヴューが、イランのテレビ局によってなされているという事実に、私としては深く思うところがある。
なるほど、イラン自身をめぐる「核兵器開発」疑惑の問題についても言及する必要はあるかもしれない。だがそれ以上に、現状の世界で史上最強の軍事超大国の核ミサイルの照準が向けられている国(の1つ)としての緊張感を、私は感ずるのだ。
(……これについては、いずれ本スレッドの別のエッセイで、さらに詳述する)
以下、テヘランの Press TV が、3月24日、ロンドンで、欧州放射線リスク委員会 ECRR(本部ブリュッセル)のクリス・バズビー(Chris Busby )教授(1945年生まれ)に対して行なったインタヴューの要旨を記す。
(むろん、著作権上の問題が将来的に発生する場合は、ただちに対応するのにやぶさかではない。
だが、当面、今回の事故のもたらす危険性に関する情報が、かくまで遮断されている現状の日本における緊急性に鑑みての人道的措置として、教授自身の警告の趣旨からしても、以下の要約は許容される範囲と、私としては考えている)
なお、Press TVのサイトでは、機関名が欧州放射線委員会 the European Committee on Radiation となっていたが、複数の情報を照合すると欧州放射線リスク委員会 the European Committee on Radiation Risks が正しいようなので、拙訳ではそちらに改めた。
(また教授の本名は、Christopher Busby のようである)
放射能危機に無頓着な日本
http://www.presstv.ir/detail/171460.html
◎ 状況は、チェルノブイリに酷似している。
当初、人びとは大した問題ではないと言い、それほどの放射線漏れはないと言っていた。
だが、事態が深刻になるにつれ、言い方は後退していった。
◎ IAEA(国際原子力機関)は、すでに高濃度の汚染が原発から58kmの地点にまで拡大している、と発表している。これはチェルノブイリの立ち入り禁止区域(30km)の倍だ。
◎ (しかもなお)IAEAは日本側当局からの発表のみで、実情を知らないのではないか。あまりに放射線濃度が高いので、誰も近づくことはできず、計器類も損傷しているため、原子炉の状況を知ることができない。
◎ もはや、なしうることは何も考えつかない。少なくとも3基以上の原子炉で核燃料は溶融していると思われ、放射性物質は大気中に放散し、海にも垂れ流されて汚染を拡げている。
誰も見たことのない事態で、手の施しようがない。解決策はなく、ただ祈るのみ。
◎ 東京はむろんのこと、一時、気流が沖縄まで流れたときには、沖縄の放射線値が突如、上昇した。ひょっとして、沖縄にある原発がメルト・ダウンしたのかと疑ったほどだ。
◎ ウラン、トリチウム(Tritium)、ヨウ素、その他の放射性物質が、本州の、福島原発から遠く離れた地域をも汚染している。人びとの健康に重大な影響を与えるだろう。
◎ 20km圏内どころではなく、100km圏以上の避難が必要だとの助言を、すでに欧州委員会のウェブサイトには載せている。
意思決定の立場にある者は、東京の住民を退避させることを考えるべきだ。
◎ このままでは、人びとは、遺伝的障害・癌・その他さまざまな疾患で死ぬよりほかない。
X線の被曝量と比較したりしている日本政府は、犯罪的なまでに無責任である。
◎ チェルノブイリ事故の後、癌やさまざまな健康障害が莫大な増加を見た。
2004年の調査では、同事故後、スウェーデン北部で11%、癌が増加している。
◎ 甲状腺ガンを防ぐ役にしか立たないが、安定ヨウ素剤は服用すべきだ。
だが、ほかにも放射線は乳癌・白血病を含むさまざまな癌を惹き起こすし、先天性畸形や不妊の問題も、チェルノブイリ事故後の旧ソ連領内では発生している。
◎ また水は、事故前に瓶詰めされた水か、西日本から供給される、汚染されていないもののみを飲むこと。
牛乳を飲んではならず、海産物や生野菜も控えること。缶詰だけを摂ることだ。
◎ 最悪の展開は、爆発が起こること。
1957年、旧ソ連・キシュテム(Kysh Tym)のマヤーク(Mayak)原発では、今回と同一の状況で爆発事故が起こり、1000平方マイルの地域が、現在にいたるまで放射線に汚染されている。
◎ 同様の爆発が起これば、地球上のありとあらゆる場所に放射性物質は飛散するだろう。
われわれは、すでに米国にその一部が飛来していると見做している。
◎ 最良の展開は核燃料が地中に溶けて、爆発を免れるというものだ。
それでも、そこは砂やスレートその他で覆い、まず100kmは立ち入り禁止区域としなければならない。
◎ にもかかわらず日本政府は、放射線値が低いと言い続け、30km圏外なら居住できると言っている。原発を作りつづけ、ウランを採掘しつづけ、金を儲けつづけたがっている。
犯罪的なまでに、無責任にも——。
以上が、テヘランのPress TVにより、3月24日、ロンドンで行なわれたインタヴューにおける、欧州放射線委員会(本部ブリュッセル)のクリス・バズビー教授の談話の要旨である。
なお、私はこのインタヴュー中、同教授の「提言」と見るべき部分に関しては——とりわけ、主として日本の現状という尺度に照らしてみたとき——必ずしも全面的に賛成するものではない。
安定ヨウ素剤の服用のタイミングの問題や、飲料水・食物の問題については、バズビー教授は現在、日本人が置かれている窮状を、知らな過ぎるという思いもある。
しかしながら、全体の主張はすこぶる首肯できるものである上、現在の日本の既存の「制度圏」メディアが、目を覆うばかり、陋劣な「御用学者」どもの「ただちに健康な影響はない」恥知らずな鎮撫プロパガンダに染め上げられている現在、この欧州放射線委員会委員の見解は、貴重なものと言わなければならないだろう。
あえて緊急に要旨を紹介する所以である。
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by uzumi-chan
| 2011-03-28 02:23
| 東京電力・福島第1原発事故